「この世界はとにかく平和だった。国家という概念はなく、戦争という言葉も知らなかったようだ。しかし七十六年前、魔王が現れた。魔王は魔物を生み出し世界中に放った。混乱の中、人々は魔物に対抗するために集落を作った。やがてそれは国となった…」
サンプルは詩でも詠むかのように言った。魔王…ゲームや漫画でしか聞かない。
「七十六年前…意外と最近？いや、そうでもないか」
「ははっ確かに微妙な年月だ。第二次世界大戦の終盤ってところか」
「第二次世界大戦を知ってるんですか」
「あぁ。実は私は転生者なんだ。二十歳過ぎにここに来て、かれこれ二十年さ」
そうだったのか…。それなら転生者の世話をしているのも頷ける気がする。そしてふと気になった。
「どうしてサンプルって名前に？」
「生前のニックネームだ」
どんなニックネームだよ。僕は思わず言いたくなる。
「そういえば、転生するとき、青年に会わなかったかい？」
サンプルが尋ねる。僕は頷いた。
「彼は一体何者なんだろう」
「天使…ですかね」
「それは…ないな」
同感です。

2/14 13:43