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小説 彼のための世界#12 |
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鯨 |
2/16 22:57 |
「え?新入り?」「男の子?」「転生者かな」「名前は?」
質問責めに合わされ、僕は気が遠くなる。転校生でもここまではないだろ。
「こらこら、困ってるでしょ。大丈夫?」
僕より少し年上に見える女性が、他の子どもをなだめる。薄いピンク色の服を着ていた。
「は…はい」
「こいつは田中一っていうんだ。おっさんに言われて田中も夕飯の準備をするってさ」
カイトが勝手に紹介する。
「よろしく、田中君。私は莉央」
莉央?名前からすると、もしかして…
「莉央は転生者なんだ。おっさんの世話になってたんだけど、結局ムーンライトの手伝いをしてるんだ」
カイトが言う。やはりそうか。そしてこの施設は「ムーンライト」で間違いないらしい。後でわかったことだが、ムーンライトは転生者の世話をする際、その人がこの世界で自立できるまで面倒を見るという。その後は自由に職を探すわけだが、莉央の様に留まって手伝いをする場合もあるのだ。謎の青年が「三年くらい」と言ったのは僕が自立するのに三年の時間をようすると考えたからだろう。