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[短編:4]ー彼岸花ー |
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入江 |
6/11 12:44 |
私を出迎えてくれた翔鶴は、以前と変わらず綺麗だった。後ろで束ねた銀髪が歩く度に揺れ、その様子は正に幻想的だ。
ソワァに座るよう促されたので、大人しく一人用ソワァに座る。リビングにはあまり家具はなく、硝子でできた長丸の机に置いてある、彼岸花を模した飴細工が妙に鮮明に映った。
彼岸花の花言葉はたしか__。
「加賀さん?」
いつの間にか、その硝子机に紅茶や菓子などが広げられていた。
「ごめんなさい、ぼーっとしていたわ」
頬を緩ませ、返事をする。
「で、どうしたんですか。加賀さん?」
紅茶を啜り、一呼吸おいて。
「会いたくなったから」
私は声色を変えずにいった。クスっ、と翔鶴は手で口を隠すようにして、笑った。
「そうですか、あの頃の盟友も、私と加賀さん、それに提督くらいになって仕舞いましたからね。私は軍を抜け、提督は最高指令官となり、加賀さんは今や、味方にとっては英雄、敵にとっては仇敵として名を馳せることになりましたから。」
昔の仲間を思い出すようにして翔鶴は空を仰いだ。
あの戦いで誰しもが大切な友を、家族を、恋人を亡くした。私や翔鶴、提督も例外ではない。