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小説 彼のための世界#14 |
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鯨 |
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「大丈夫か?」
カイトが僕の背中をさする。
「あ…あぁ」
周りの人々が僕を見た。
「今日は、ゆっくり休むといい」
サンプルが言った。食事を残し、僕は寝室へ向かった。
人は必ず死ぬ。思い知らされた気分だ。こうして転生しているものの、僕はもとの世界へは戻れない。
「入るぞー」
扉が開く。カイトだ。
「ごめん。ちょっと…あれで」
僕は曖昧に言う。
「…わかるよ」
「え?」
それ以降、カイトは喋らなかった。しかしその言葉のおかげか、僕の気持ちは少し楽になった。そうか、彼らも僕と同じような経験をしているのか。
「なんか…ありがとう」
僕はお礼を言う。
「別に何もしてないけど、落ち着いたならよかったよ」
カイトは頭をかく。
カイトに、サンプル。莉央や他の子ども達。彼らは僕を迎え入れてくれた。僕も彼らの善意に応え、しっかりしなければ。僕は気をとりなおす。
何かが崩れ落ちる大きな音と悲鳴がきこえたのは、その直後だった。