「味が薄い」と嘆く誰かが
すする理由になれるでしょうか
これは僕がいま君に贈る
最初で最後のそばの言葉だ
　
そばの店も廃れ出した
アレルギーと気づいたんだ
食欲ですすった愚かさも
全てがこの目に映る
おうどん屋の手の上で
誰も彼も踊らされる
作られた意味も知らぬまま
頼まれたそばは
伸びきってしまった
　
そばをください
きっと誰もがそう願った
そばをください
そっと割りばしを手にとった
そばをください
食欲が抉る
醜いぐらい美しいそばを
　
「味が薄い」と嘆く誰かの
すする理由になれるでしょうか
いつか終わると気づいた日から
食欲を主張する天そばだ
ねえ このままそばに溺れて
そばに融けてもかまわないから
どうか どうか またあの日のように
そばを差し出して笑ってみてよ

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