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小説 彼のための世界#15 |
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鯨 |
2/19 23:29 |
「なんだ!?」
急な出来事に困惑する。
「行くぞ!」
カイトが部屋を出た。僕はあとを追う。悲鳴が大きくなってきている。近くか。
「カイト!田中君!」
声がした。振り返ると、莉央が立っていた。
「逃げて!魔物が…」
途端、唸り声が響いた。背後に気配を感じる。
「あ…あぁ…」
隣でカイトが声を漏らす。僕は恐る恐る振り返った。そこには、翼の生えた、巨大な竜のような魔物がいた。口から人の腕がはみ出ている。僕は体が動かなかった。喰われる。そう思ったとき、目の前に赤い影が現れた。サンプルだ。身長ほどの大きさの大剣を持っている。
「逃げろ!」
「で…でも」
「君達には倒せない。早く!」
カイトと僕は迷ったが、サンプルの言うことは最もだったため、結局走り出した。
「他の皆は!」
カイトが莉央に尋ねた。
「外に逃がした。けど…」
莉央がいいよどむ。きっと助からなかった人もいるのだろう。魔物の口にぶら下がっていた腕が、それを表していた。