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小説 彼のための世界#17 |
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鯨 |
2/21 15:40 |
「おい。他に人はいるのか?」
男が尋ねる。
「お…奥に…サンプルさんが」
莉央が答える。彼女もこの状況に驚いているようだ。
「そうか…フラン!」
男が叫んだ。すると、男の背後から女が現れた。魔女のような格好をしており、ハロウィンの仮装を思い起こさせる。
「この人達を外に」
「わかった。こっちに来て」
女が手招きをする。僕達は近づいた。出口の前の瓦礫は、いつの間にか端にどかされていた。あの男がやったのだろうか。
「さて、行くか」
金髪の男は呟くと、奥へと走っていった。
「あの…ありがとうございます」
僕は女に礼を言う。
「まだ気を抜かないで。」
「あなたは一体…?」
莉央が尋ねる。
「私はフラン。さっきの彼はEuclid。さ、早く外へ」
フランが促す。僕達は壊れた扉をくぐった。