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小説 彼のための世界#19 |
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鯨 |
2/22 18:42 |
ヲタクと呼ばれた男が慌ててサンプルに近づく。そして彼を地面に寝かせ、バッグを漁った。
「氷龍の涙は…あった!」
小瓶を取り出し、中の液体をサンプルの腕の断面にかけた。すると一瞬で断面が凍り付いた。そのあとも様々な薬品を使い、手当てをする。
「とりあえず、命は助かりました…」
ヲタクが汗を拭いながら言う。僕達は安堵の息を吐いた。
「しかし…少し思うところが…ちょっと調べさせてもらいます」
そう言い、ヲタクはサンプルを抱えてどこかへ行ってしまった。
「おいっお前…」
Euclidが声をかけるが、すでにヲタクの姿はない。
「サンプルさん…大丈夫ですよね?」
莉央が言う。
「ヲタクの様子があれだけど…彼は宮廷でも指折りの回復魔道士だから。きっと大丈夫よ」
フランが莉央をなだめる。僕は少し安心したが、なぜそのような人がここにいるのか疑問に思った。
「あなた達は…」
僕が尋ねた頃には、彼らは別の場所に行っていた。