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[短編:10]ー彼岸花ー |
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入江 |
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私が彼女の心につけた傷は、私の中にも深い傷痕を残していた。
あの戦いで私は瑞鶴に命を救われた。敵戦艦の直撃弾を受け、重症を負い、瀕死に追い込まれた私を瑞鶴が庇って、運悪く急所に当たり一命はとりとめたものの、帰還中に出血多量で死亡した。
私が彼女の最愛の妹の瑞鶴を殺したのだ。
翔鶴は泣きつかれたのか既に眠っていた。私は翔鶴と対面するかたちで翔鶴を見つめている。
昔、私は翔鶴に淡い恋心を抱いていた、同性とかそんなことなど無視して、好きだったのだ。そのことにきずいた瑞鶴は積極的に私の複雑な恋愛に協力してくれた。瑞鶴と仲良くなるにつれて、必然的に翔鶴との仲も深まっていった。
だが、あの日を境に何もかも変わってしまった。
翔鶴は除隊し、瑞鶴は他界、提督と私はそれなりの地位についたが心の隙間は埋まらない。
提督も自分が愛した相手の最後を見てやれなかった事を嘆いていた。今も提督の薬指には銀色に輝く婚約指輪がはまっている。