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小説 彼のための世界#20 |
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鯨 |
2/22 23:2 |
広場には、むしろが敷かれて、その上に犠牲者が乗せられていた。遺族と思しき人々が涙を流している。犠牲者の中には、カイトに追いかけられていた少年や、料理中に僕に声をかけてきた転生者もいた。出会って一日も経っていないため涙は出なかったが、やはり心苦しい。
「いやぁ、まさか勇者様が来ていらしたとは…」
小太りの男が広場の端で話していた。相手はEuclidだ。勇者?どういうことだ。
「どうやら魔王討伐の旅に出ていたらしい。偶然ここに来たわけだと」
僕の表情を見てか、横にいた男が説明してくれる。フランやヲタクもその一員だろうか。
「あなた様のおかげで被害は最小限にすみました」
小太りの男の声が聞こえる。
「…これだけ人が死んで何が最小限だよ」
カイトが呟く。確かに、先程の発言は不快に感じた。それに対してEuclidが何と答えたか、僕には聞こえなかった。