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[短編:11]ー彼岸花ー |
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入江 |
6/17 18:47 |
「加賀さん」
聞いたことのある声だ。
「良いの?」
誰の声かわからない。だけど知っている、周りは真っ暗で何も見えないが声だけは鮮明に聞こえてくる。
この声は、瑞鶴だ。
「好きなんでしょ?」
__それは貴女もそうだったんじゃない?
「…叶わないのはどっちも一緒かも」
クスリ、と彼女は笑った。
昔の…記憶。
「今のは…」
目が覚めると横にはぐっすりと眠むりについた翔鶴がいる。
__夢?
「それは現実です。加賀さん」
寝ているはずの翔鶴が口だけを動かしそう言った。
「貴女が私の妹を殺したんでしょう?」
__違う違う、私はそんなことをしてはいない。
「瑞鶴がいては私が貴女を好きにならないから、わざと被弾して庇わせた。瑞鶴は優しい子ですからね? 庇ってくれますよね?」
__違う違う違う…。
「違う!!」
大声をあげていきなり飛び起きた私を寝ぼけ眼の翔鶴がポカンと見つめている。
「…どうしたんですか?」
目を擦りながら聞いてきた。
「…夢をみたの」
__この夢に魘されたのは数ヶ月ぶりだ。まさかここでなんて…。