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小説 彼のための世界#22 |
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鯨 |
2/24 22:43 |
広場での集会の後、僕達は宿屋に泊まった。サンプルも心配だったが、それ以上に睡魔が襲ってきた。カイト達とは別の部屋のため、彼らが今何をしているのかわからない。きっとショックだろう。いや、ショックという言葉だけでは足りないかもしれない。にしても、勇者か…。ゲームでしか聞いたことないな。魔王といい勇者といい魔道士といい…。この世界は一体何なんだ?
『田中君』
突然名前を呼ばれたため、僕は驚いた。慌てて振り向く。そこには、別れたはずの彼女がいた。
『私達、別れよう』
彼女の口から放たれた言葉は、淡白なものだった。
『ほら、受験も近くなったし、お互いのためにここは別れた方がいいと思うの』
なるほどその通りだね、とはいかない。僕はなんとか粘る。すると彼女の姿が揺らぎ始めた。そしてそこには、あの巨竜がたたずんでいた。
「うわぁ!」
僕はベッドの上にいた。周りには彼女も巨竜もいない。日の光が眩しい。嫌な夢を見た。