|
|
[短編:12]ー彼岸花ー |
|
入江 |
6/21 23:34 |
加賀さんの息が荒い。
「ごめんなさい、驚かせちゃったわね」
加賀さんの言葉には何か別の物事への謝罪の念が籠っていた。
起き上がり、乱れたベッドの上に投げ出された手が、小刻みに震えている。
「大丈夫ですよ、前にも言ったじゃないですか。 私はずっと加賀さんの側に居ますから」
それが加賀さんへのせめてもの恩返しだ。震えている手にそっと手を重ねた。
「…ごめんなさい、…本当に…」
加賀さんは昔から悩み事の相談を受けてばかりで、自分のストレスの捌け口を見つけられていなった。たまには、ばーんと流した方が良いですよ。
私に寄りかかった加賀さんをしっかりと抱きとめ、子供を諭す様に、言った。
「翔鶴は、やっぱりお姉さんなのね」
加賀さんの潤いを纏った声が、私の耳もとで聞こえる。
私は加賀さんを支えたいと思っているし、加賀さんも私を支えてくれた。
見た目も中身もクールな加賀さん。
でも実は泣き虫で、ちょっと甘えん坊。
私はそんな加賀さんが、今も昔も大好きだ。
「……今のは聞かなかった事にしてあげる…。」
しまった、声に出てた。
__END__