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小説 彼のための世界#25 |
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鯨 |
2/27 13:57 |
フランの案内で僕達は煉瓦造りの建物へ辿り着いた。
「こっちよ」
フランが手招きする。通路を通り、ある部屋の前に立つ。
「この中にいるわ」
フランが扉を開けた。部屋の中央にはベッドがあり、その横の椅子に男が座っていた。ヲタクだ。
「フランさん!君たちまで…」
彼は覚えているらしい。
「どう?その人の調子は」
フランが尋ねる。ベッドにはサンプルが寝かせられていた。
「おっさん!」
「サンプルさん!」
カイトと莉央が駆け寄る。しかし眠ったままだ。
「おっさんは大丈夫なのか?」
「命に別状はない、けど…」
ヲタクは言いよどむ。
「賑やかになってるな」
部屋に誰かが入ってきた。Euclidだ。僕達をみて眉をひそめる。
「お前達は…」
「サンプルって人の知り合い」
フランが説明する。
「で、この人は本当に大丈夫なの?」
「…呪いです」
ヲタクが口を開いた。
「あの巨竜の牙には、呪いがこめられています。それに噛まれたことによってサンプルさんは眠ったままなんでしょう」