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小説 彼のための世界#26 |
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鯨 |
2/27 14:32 |
「嘘…」
莉央が呟く。
「じゃあ、ずっと眠ったままなのか?」
カイトがヲタクに詰め寄る。
「方法はあります」
「方法?」
「はい。あの巨竜を倒せば呪いは解けます」
あれを倒すのか?僕は巨竜の姿を思い浮かべる。とてもじゃないが無理だ。カイトと莉央も同じことを思ったのだろう。二人とも絶望の眼差しをしていた。
「安心しろ。俺達が倒してやる」
Euclidが言った。確かにこの人は巨竜を一太刀で倒している。
「明日俺達は出発する。巨竜も魔王も倒して、さっさと帰ってくるさ」
「そう簡単にはいかないでしょ」
フランが呆れ半分に言う。
「目覚めるまで、サンプルさんの世話はどうすれば…」
莉央が尋ねた。
「宮廷から派遣された人の中に、回復魔道士がいるはずです。その人に任せてください」
僕は宮廷という場所を想像する。きっと豪華だろう。その程度の想像しかできない僕は、やはり庶民だ。