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小説 彼のための世界#29 |
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鯨 |
3/1 22:41 |
「なぁ、おかしくないか?」
ネズミのような生物をあしらった帽子を被っている男が言った。
「俺は音楽家だ。肉体労働は向いてないんだよ!」
彼の名はうちゃこん。転生者だ。生前は人気ロックバンドの一員として有名だったが、交通事故で死亡。転生後は音楽の才能を認められ、宮廷音楽家になった。
「お前もそう思わないか?海月」
海月と呼ばれた女が振り向く。
「音楽で復興の手も進むんじゃないの?あと、その呼び方やめてくれる?」
彼女の名はモモ。研究者だが、実験で怪物クラゲを大量増殖させてしまい、研究所を一つ潰してしまったことがある。その失敗から、「海月」と呼ばれている。
「まぁ、かなり人手不足なんでしょうね…」
彼らは町の復興のために派遣されていた。
「町が見えたぞー!」
列の先頭の方から声が聞こえる。
「はぁ、やっとか…」
うちゃこんはため息をついた。