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小説 彼のための世界#35、5 |
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鯨 |
3/9 22:26 |
「なるほど、「めい」でいいんだね」
青年は目の前の少女に言う。
(このやりとりも何回目だろうか…)
この空間に来る人に、新しい名前をつけさせ、新しい世界に送る。単純ゆえに退屈だ。
(ん〜。この子をどこに転生させようか)
転生させる場所は青年の意思で決めていた。なるべくその人が活躍できそうな場所に転生させているつもりだが、かえって大変な目に遭う場合もある。
(仮面の彼はあんな状況だし…)
困ったときには大抵、転生者の世話をしている男がいる町に送るのだが、その男が現在、昏睡状態にある。
(まぁいいか。あの町で)
考えることを止めた。
「じゃ、楽しんでね」
青年は手を振って、少女を送り出した。