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小説 彼のための世界#28、5 |
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鯨 |
2/28 22:34 |
「勇者が出発したか…」
玉座に座っている男が言う。彼の前には黒服の男がひざまずいていた。
「はい。今朝、町を出ました」
黒服の男が答える。
「すでに部下を向かわせています」
「そうか…ではいつものように仕事をしろ。今回の勇者は転生者だ。慎重にな」
「そう、伝えておきます」
黒服は頭を下げたまま言う。
「…また新しく転生者が出たようだな」
少しの沈黙の後、玉座に座る男が口を開く。
「はい。あの町に転生してきたとのことです」
「うむ…。コザルよ」
コザルと呼ばれた黒服の男は顔をあげる。
「お前はその転生者を監視しろ」
「…承知しました。我らが王よ」
魔物を生み出した男の命令を受け、コザルは深く頭を下げた。